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アンバサダーマーケティング導入事例、パルシステム

新規顧客の獲得機会は既存顧客から生まれる 〜パルシステムのアンバサダーマーケティング〜

新規顧客を連れてくる

産地と環境に拘った食品を届けてくれるパルシステムは、2018年より自社でアンバサダープログラムを開始。そして2022年にデジタル施策を加速させるため、アジャイルメディア・ネットワークとアンバサダープログラムをリニューアルしました。
結果として、アンバサダー登録者数が14倍、アンバサダー経由での加入実績が4倍となった今回の取り組みについて、パルシステム生活組合連合の今井様にお話を伺いました。

今井 昭博さんパルシステム生活組合連合会 営業部 営業企画推進課
河野さんプロフィール写真
望田 祐作アジャイルメディア・ネットワーク株式会社 アンバサダープラットフォーム
ビジネスクリエイト事業部
河野さんプロフィール写真
徳力 基彦アジャイルメディア・ネットワーク株式会社 アンバサダー/ブロガー

組合員の紹介システムの資産をアンバサダー活動へ展開

望田:今井さん、本日はよろしくお願いします。

お話をしてくださる今井様

今井さん:よろしくお願いします。パルシステム生活協同組合連合会の今井です。私は、2002年にパルシステムに入協し、配送・営業現場を経験したのち、2021年に営業部に配属になりました。営業部では営業の実績や紹介に携わるほか、ファンマーケティング活動を担当させていただいています。

徳力:営業部が主導でアンバサダープログラムを取り入れることは珍しい印象ですが、御社の営業部というのはどんなお仕事がメインでしょうか。

今井さん:新規の組合員様を獲得していくことがメインです。その中で、「紹介」という取り組みの一環で、アンバサダー活動に取り組んでいます。

徳力:実は妻もパルシステムを使っているのですが、上の子どもが生まれるときになかなか気軽に家から出られなくなり、知り合いの人から薦められたのがきっかけと聞いています。そういう「紹介」が多いのですね。

今井さん:地域のご近所さん、お友達などよく知っている人をメインに、何かのきっかけがあると「運んでくれるので便利だから」と推薦・紹介していただいて組合員になっていただくことが多いです。アンバサダープログラムは、それをSNS上にも展開しているといえますね。

加入者数増、連合会限定のアンバサダー施策を3年実施

望田:今日はパルシステムアンバサダーの活動から、新規顧客獲得に繋がる施策設計や、マーケティングの成功ポイントなどを見ていきたいと思います。さっそくですが、パルシステムのアンバサダープログラムは、どのようにして始まったのか教えてください。

今井さん:先ほど徳力さんにお話ししたように、パルシステムは組合員ごとに発行する専用の紹介コードがあり、お誘いした人が新規に入協された際には、紹介者と紹介された方の両方にクーポンなどのプレゼントをする紹介システムを以前より行っています。

望田:その紹介コードを使ったお友達紹介システムのほうが、アンバサダープログラムの活動より先にあったのですね。

今井さん:そうです。ですから、アンバサダープログラムを立ち上げたときは、この紹介コード経由の新規加入者数の増加と、SNS投稿によるパルシステム自体の認知拡大、そして紹介コード制度の認知拡大という3つの目的がありました。

実は、我々がアンバサダープログラムを実践する前にも、パルシステムの商品を何十年と利用してその良さを認識して、自主的にパルシステムの商品をSNSで紹介してくださっている方々がいらっしゃいました。そういう方々をどんどん増やしていきたいですし、またその投稿を多くの人に見ていただきたいと思い、アンバサダープログラムを取り組み始めたという経緯があります。

望田:2018年から2021年までは自社内のみでアンバサダープログラムを行っていらっしゃいましたが、どのように運用されていたか教えてください。

今井さん:2018年からのプログラムでは、SNSのクチコミを増やす取り組みとして、アンバサダーを期間限定で募集し、その中から選考させていただいた40名程度をアンバサダーに認定、1期3ヶ月の間、アンバサダー活動をしていただきました。アンバサダーになった方は、毎回「#パルシステム購入品」「#パルシステムのある暮らし」「#推しパル」のいずれかのテーマで、ハッシュタグと紹介コードまたは紹介URLを付け、Instagramに投稿いただくという活動内容をお願いしていました。

人数を40人と限定したのは、アンバサダーの方がハッシュタグを付けて活動をしていただいているのかを確認する方法が「手動でカウントする」だったため、マンパワー的にこの人数が限界ということでした。

インセンティブとしては、まず選考が終わった際に認定証とパルシステムのPB製品のセットをプレゼントとしてお送りすること、そしてSNS投稿の条件をクリアしてもらった場合にはポイントを付与する(1,000ポイント×3か月、完走できたらさらに500ポイント)というものでした。

望田:アンバサダーの方はかなり熱心に投稿されていたようですね。

今井さん:ポイント獲得には月に4回以上投稿いただく条件でしたが、なかには毎日のように投稿される方もいらっしゃいました。
届いた商品を写真で紹介する方もいますし、調理したお料理を撮影している方もいます。一番加入者を多く獲得した投稿の方は、マンガを使って紹介してくださっていました。このような投稿が増えるうちに、もっと多くの人の目に触れるようにできたらいいのに、とも思うようになっていました。

望田:最初は少なかった紹介による加入者数も着実に伸びています。

加入件数・投稿件数実績推移紹介

今井さん:2020年に急激に増えています。これはコロナの影響があると思います。外に出られないということもあって、SNSを見ることが増えたり、宅配について調べたりという方が増えた時期が重なりました。

徳力:オンラインへの展開が素晴らしいなと思うのですが、御社の中でもともとSNS上でのノウハウがあり、アンバサダーマーケティングを始められていたのでしょうか。

今井さん:いろいろ試していた一環、という時期にあたります。2018年の開始当時は、FacebookとInstagramの両方を試していました。結果的にInstagramの反響がよかったので、Facebookを止めてメディアを絞ったことで加入者も伸び、かつ、Instagramでやってほしいことも会員の方に伝わりやすくなったのかと思います。

徳力:オフラインでの紹介活動としては、紹介コードのシステムは古くからあるとお伺いしたことがございます。

今井さん:紹介コードは2006年ごろからありました。生協というのは、組合員紹介は昔からありますが、さらに以前は、近隣の住所も電話番号も知っているお友達に対してでないと紹介できない方式でした。デジタルが発展して、電話番号など知らない人も増えた現状にそって利用できるようにしたのが紹介コードでした。

徳力:SNSアンバサダーが、旧来のお友達紹介から発展させて始まったという流れは面白いですし、その分、社内でもアンバサダーという「人に推薦してもらう」システムの重要性が理解されている素地があったのは、一般企業ではない利点だったのではないかと思います。

永続的にアンバサダー活動を伸ばすための課題とは

望田:そして、アジャイルメディアにお声がけいただくことになったのですが、当時、どのような課題があったのでしょうか。

今井さん:2021年まで、いいね!数や投稿しているかのチェックを1件1件目視で数えていたのですが、この方法に限界を感じていました。これがアンバサダーを増やせない理由と分かっていたのですが、改善する方法がなかったのでその先へ踏み出すことができないでいました。また、人数を増やしていくにも、インセンティブの予算増加には限界があるという課題もありました。

もう一つ気づいていたのは、キャンペーン終了後のアンバサダーさんについてです。かなりの方が、モチベーションが高く、キャンペーン終了後も投稿を続けてくださっていたんですね。そこが申し訳なく、こういった方の活動を支えながら、年間を通じて無理なく投稿をし続けていただくための関係構築はできないだろうか、ということも考えていました。
そういった中でアジャイルメディアさんにお話しする機会を経て、ご協力いただくことになりました。

みえてきた課題

望田:私もいろいろなお客さまからお話しを伺っていますが、やはりリソースが足りないといったようなお声や、インセンティブ設計をどうしたらよかわからない、といったお声は多く頂戴します。

アンバサダープログラムのリニューアルによる変化

望田:ここからは、どのようにプログラムをリニューアルされていったのか詳しく伺いたいと思います。

今井さん:2022年度から、アジャイルメディアさんのお力を借りながらリニューアルを進めました。ポイントとしては3つあります。1つ目はアンバサダープラットフォームを導入したこと、2つ目はアンバサダー限定企画を実施すること、3つ目はインセンティブ設計のリニューアルです。順番にお話ししていきます。

リニューアルのポイント

1)アンバサダープラットフォームの導入で人数制限を解除できた

今井さん:アンバサダープラットフォームについては、これまでは目視で確認を行っていたところが、プラットフォーム上にまとめて可視化されて状況がかんたんに把握できるようになりました。
実際に使ってみていいなと思ったのは、投稿企画、文章などをアンバサダーに一括で送信できる便利さです。

プラットフォーム紹介

2)アンバサダー限定企画の導入で商品紹介も力を入れる

今井さん:パルシステムでは、組合員活動というものも行っています。時代の流れで、ご近所とのつながりが希薄になっているところもありますので、これをデジタルに置き換えSNSで拡張できないか、ということを課題として考えていました。そのため投稿企画では、パルシステム商品のお薦めを通じて、組合員活動の活性化をできればと考えました。
限定企画には、大きく商品モニターと特別イベントの参加があります。

限定企画の狙いは、パルシステムで扱っている商品を薦めてもらうことです。添加物を減らし、化学調味料をなるべく使わないという自主基準がありますし、そういったパルシステムの目指すものについてもっと広く知って欲しいと感じています。

限定企画の紹介

3)インセンティブの設計をリニューアルし、紹介の「きっかけ」をつくる

今井さん:アンバサダープログラムのリニューアルで苦労した部分としては、これまで一定だったインセンティブを、活動に応じてランクアップするポイントシステムへと変更しました。

ポイント以外にも、紹介コードが利用されると新規入会者は4,000円、紹介者には1,000円の値引きがされます。値引きが来ると、やはり皆さんインパクトが大きいようで「私の紹介、使われたんだわ……!」とレシートを見て実感し、さらに熱心に紹介してくださる傾向が見受けられます。

リニューアル全体の成果は、やはり長期的に運用可能なインセンティブ制度に作り直せたことが大きいです。施策やモニター参加の頻度は自由ですが、インセンティブによって活動がモチベートされること、また、紹介コードによってインセンティブが得られること自体をより多くの方に周知できるようになったことも成果だと思います。

パルシステムのお友達紹介

社内の協力を得て、今後さらに多くのアンバサダーとコミュニケーションを

今井さん:今後の展望としては、まず最初にアンバサダーを今期中1,000名規模に増やすことを目指しています。
望田さんへ最初に相談したときに、「顧客をターゲットとするのではなくパートナーと考えましょう、そして自社のファンを作ることが大事です」というお話しを聞いて、それが私たちの考えともよく合っていると思いました。現時点ではこれまでに貢献していただいたアンバサダー経験者のお客さまに声をかけることにしましたが、今後さらに数は増やしていきたいですし、来期も新しい目標を掲げ伸ばしていきます。

2つ目は施策やコミュニケーションの強化による活動率の向上です。アンバサダーの方も、ある程度一定の時間が経つとだいたいこのくらいの活動、という限界が見えてきます。そこに対して公式SNSでアンバサダーの方々の発言を促進し、UGC投稿をピックアップで紹介してモチベーションを感じていただくなど、デジタルコミュニケーションの施策に力を入れていきます。

3つ目はアンバサダーの熱量を上げてパートナーとして育成していくということです。パルシステムは、有機栽培の促進でもトップレベルなのですが、正直あまり我々のPRがうまくなくて、アピールできていないという課題があります。むしろ私たちが一方的に言うよりは、SNSを通じて、利用してくださるアンバサダーの方々など当事者の声や評価が、もっと広がるようにすることが大事かなと思っています。

徳力:社内でのアンバサダーマーケティングへの理解をお伺いしたいのですが、御社の業態は助け合っていこうという組合員からなるところもありますし、お話しのように友達紹介プログラムも昔からあり、アンバサダープログラムを始めるにあたってはかなり理解のあるほうだと思います。ただ、初年度第一期の加入効果は9人ですよね。この少人数で、すぐ辞めろと言わなかった上層部も偉いと思います。

今井さん:たしかにそうかもしれません。
ただ、Instagram が今後すごくなるだろうという考えは経営層もちょっと感じていたようです。それもあって、少人数の体制でやるならと許容されたのかなと思っています。
それに、大きな数字でなくても、確実に「誰かがクチコミをやってくれている」ということは伝わったのかなと思います。また、インフルエンサーの方には、組合員活動もしている方がいますので、信頼度が高かったということもあるかもしれません。

徳力:SNSの力はそこまで信じられないとしても、やっている人のことが信頼でき、顔が見えている関係の人同士だというのも良かったのかもしれませんね。そして、今井さんたちがスモールスタートでもコミュニケーションを3年間続けて、加入件数もずっとのばしていったというのは、ほんとうにすごいことですし、今後の展開が楽しみです。

また、アンバサダー活動が売上に貢献するという風に上司を説得する材料が必要ですが、アンバサダーへの費用投資に関してはどのように上司を説得しますか。また周りを巻き込むための工夫はありますか。

今井さん:パルシステムの場合は、1組合員ごとにどのくらいの利用があるということは、すでに部内で確認がされています。
加入件数に応じて1人あたりの注文金額は予測できていますし、いろいろな勧誘方法があるなかで、紹介入会者はほかの入会に比べて消費金額が高いということもわかっています。あとは投資したことの回収は必要かなと思っています。

望田:一般の企業で言う売上に繋がる資料がない場合も、ECなどがあればクチコミとECの売上の相関を示すことでその効果を仮説として示すことができると思います。また、予算がうまく取れない場合はスモールスタートで、あまり予算がかからない部分からチャレンジしてみて、成果が見えてきたら予算獲得をされてくださいとお薦めしています。

徳力:最初から施策予算というよりは、調査費用くらいから始めることも多いですね。
では望田さん、今井さん、最後にこれからアンバサダープログラムをやってみたいというみなさんへ、一言アドバイスをお願いします。

望田:まだアンバサダープログラムに興味があるけれど、立ち上げられるか不安という場合は、まずファンの方々の話をじっくり聞いてみる機会を設けることが大切だと思います。アンケートベースでヒアリングできる内容、例えばNPS調査などをして、推奨意向のあるファンの方が存在するのか、状況把握から初めてみることもいいのではないかと思います。

今井さん:もともとSNSで投稿されているファンの方がいらしたのですが、こちらがやりたいことばかりではなく、組合員さんがやってみたいことや声を吸い上げながら進めていったことが大切だったんじゃないかと思います。

徳力:なるほど、SNSで既に発言されているファンの姿を見据えてスタートしたプログラムだったのですね。今井さん、本日は、ありがとうございました。

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