WORKS導入事例
アンバサダープログラムをきっかけに投稿数が10倍に
有楽製菓「黒い広報室」の密なコミュニケーション 有楽製菓株式会社 ポジティブな評判を形成する
食感系チョコレート菓子として多数のファンを抱えるブラックサンダーシリーズを販売する有楽製菓では、2021年よりTwitterを使ったファンマーケティングを開始しました。スタート当初から担当をされている鈴木さんに、Twitterでのコミュニケーションの難しさや、ファンの活性化のヒントを伺いました。
もくじ
ビジネスクリエイト事業部
デザイナーから広報室SNS担当へ
吉田:本日はよろしくお願いします。
はじめに、「黒い広報室」室長である鈴木さんの自己紹介をお願いできますでしょうか。鈴木さんは、以前「ガラス職人」をされていたと小耳にはさんだのですが……。どのような流れで現在のお仕事に就かれたのでしょうか
鈴木さん:こんにちは。ガラス職人は5年間やっていました。大学ではグラフィックデザインを学んだのですが、自分の可能性をあえて縛りたくないと思い、ガラス製品の製造・デザインの会社に入りました。その後、デザイン事務所のアシスタントとして転職し、有楽製菓でデザインをできる人材を探しているという誘いを受けたのがきっかけで、入社しました。経歴はめちゃくちゃですよね(笑)。これまで、SNSやマーケティングには無縁だったことは確かです。
吉田:一貫してデザインのお仕事がメインだったのですね。
鈴木さん:有楽製菓のことを聞いたときは、自分はお菓子にはあまり興味がなく、デザインができるなら入社したい、という感じでした(笑)。
吉田:今のメインの業務は何になるのですか。
鈴木さん:マーケティング部に所属しており、SNS(主にTwitter)の業務は専任となっております。
吉田:SNSは前任者の方から引き継いでご担当になったということですが、ご担当に指名された理由や当時のことを教えてください。
鈴木さん:担当になったときは不安しかなかったです。なんといっても自分自身、TwitterもほかのSNSもやっていなかったのにも関わらず、引き継いだ時点でフォロワーは4万人もいました。また、その時までは、目的や方針もはっきりしないまま前任者が運営を行っていたので、何をどうするのか、右も左もわからない状態でした。
吉田:なんとなくやって4万人って、企業アカウントとしてはすごいです。
鈴木さん:そうですね。ブラックサンダーシリーズのファンの力というのは、最初からポテンシャルは高かったのかもしれません。SNS担当になって1年経ったころ、社内から「ファンマーケティングというやつをやってみてほしい」と指示が下りました。ですから、「黒い広報室」の原型になったアンバサダー活動は2021年の春に始動しました。
お話をしてくださる、「ブラックサンダー黒い広報室」 室長 鈴木さん
ブラックサンダーの「黒い広報室」とは
吉田:「黒い広報室」は、インパクトの強い名称ですが、どんな活動をされているのか、教えてください。
鈴木さん:ブラックサンダーのファンの方に「黒い広報員」としてオンラインで登録していただき、「#ブラックサンダー黒い広報室」というハッシュタグを付けてブラックサンダーの情報を広めていこうという、Twitter上でのファンマーケティング活動をしています。登録いただいた広報員の方には、1ツイートごとに1ポイント、1日上限3ポイントが貯まるしくみで、10ポイント獲得すると係長、30ポイントで課長、956ポイントで部長へと昇格していきます。なお、僕は室長なので、広報室トップということになっています。
「黒い広報室」ポイントアッププログラム
鈴木さん:インセンティブはほとんどなく、自発的な投稿に任せているのですが、非常に活発に広報活動をしていただけていることに、僕も驚いています。
吉田:役付けが昇格していく制度なのは面白いですね。
鈴木さん:広報室の告知などの際に使っている室長ハンコというのがありまして、それは僕しか使えないのですが、役職というしくみに絡め、今、部長になった方には部長ハンコを差し上げるというのをやっています。お届けしたらすごく喜ばれていてよかったです。使える場所はほとんどないと思いますが(笑)。
吉田:そういったグッズも「黒い広報室」ならではのインセンティブだと思います。でもこの名称は、最初から使っていたわけではありませんでしたよね。
鈴木さん:スタート時点では「ブラックサンダーアンバサダー」という名称でした。半年間で1,000人のアンバサダー登録を目指していましたが、それを1ヶ月で達成してしまって、これからどうしようという時、「このネーミング、なんだかイメージと違わない?」という話が社内で出ました。なんというか、もっとファンと近い関係にできないのかということでした。
確かに、アンバサダーというとマーケティング用語っぽくて、身近なお菓子のイメージと距離がありました。そこで4つの案を出してファンのみなさんに投票してもらい、選ばれた「黒い広報室」に名称変更しました。
吉田:遊び心にあふれたネーミングですね。アンバサダーの方々も遊びながら広報活動を楽しむことができると思います。
鈴木さん:そうなんです。ネーミングが変わってかなり変化がありました。クリエイティブも私が作成をしているのですが、パッとイメージが出てくるようになりました。以前は「アンバサダーってどう表現すればいいんだろう…」という感じでしたが、「黒い広報室」になって、ビジュアルイメージがすぐできあがって、まとまりやすくなりました。やっていることは変わらないのに、活動自体がしやすくなりましたし、何をやっているのかも伝わりやすくなったと思います。演出の大切さを学びました。
広報員はすでは2,200人を突破!
吉田:現在、「ブラックサンダー黒い広報室」はまたぐっと メンバーを増やして2,200名もいらっしゃるんですね。これだけ応援してくれる方が可視化されているのは素晴らしいです。
鈴木さん:はい。昨年は、新製品発売に絡めて広報ミッションを展開したり、オンラインで「黒い広報会議(ファンミーティング)」を開催するといった活動をしてきました。新規認知を増やして行くためにも、広報員数は増加 を目指しています。今年からは「黒い決裁申請」というプログラムで、「ブラックサンダーを広めるために、こんな理由で使用したい」という理由(1,000文字以内)のもと決裁申請を出していただき、その中から役職者を対象に毎月30名の方に対して室長が承認し、ブラックサンダー1箱(20本入)をお送りするという試みをしています。
吉田:みなさんすごく一生懸命に書かれていて、これは全員に差し上げたくなる内容ですね。
鈴木さん:基本的に、もしメーカーから「これおいしいですよ」と薦められても、興味のない方は「いえ結構ですよ」で終わりです。それを広報員の人たちから、身近な家族や友達などに薦めてもらおう、という企画です。学校のみんなで食べたい、会社の人に食べさせたいなどもありますし、中には大学のプレゼンの練習でブラックサンダーについて発表するからその際に聞いてくれた同級生に配るため、という人もいました。広報活動実施後は、「#黒い広報室_業務報告」をつけ、Twitter上で報告いただくことをお願いしているのですが、こちらもみなさんほぼ写真付きで丁寧に提出してくださっていて、ほんとうに嬉しいです。
吉田:決裁申請から報告書までが一連の流れになる仕組みなのですね。
鈴木さん:本当は、商品を欲しいという人には全員にお配りしたいのですが、叶えることができずこういう形になっています。熱い投稿ばかりで、みなさんの文章をすべて読んで選考するのがとても大変なくらいの反響をいただいています。
SNSの更新をする上で重視するリプ活動
吉田:アンバサダーの数も伸びていますが、公式ツイッターのフォロワーも4万人から44万人へと10倍以上に増加しましたね。
鈴木さん:基本的にはフォロー&リツイートキャンペーンを定期的に行うことで、伸ばしています。ただし、ADは注力商品以外は入れていないので、 純粋にファンの方のオーガニック投稿で多く拡散していただいて、そこから新規フォロワーを獲得しています。
吉田:広報員やフォロワーの方の熱心さが伺えますが、そんなフォロワーの方に接するために鈴木さんが心掛けていることはどんなことですか?
鈴木さん:ブラックサンダーに関わる投稿は、なるべく全てを読んで、メンションいただいた内容には積極的にリプライしています。
SNSって返事がなくてもただ書きたいことを書いているという面もありますが、世間に声を出している以上、返事をもらえると単純に嬉しい、というのが僕の経験上言えるからです。ブラックサンダーのことで広報員同士が反応しあうというのもいいですが、公式アカウントからの反応があればいちばん嬉しいと思ってもらえるのではないかと。ですから、業務中SNSに注力する 時間がたくさんあるわけではないですが、時間が取れるときに集中してファンの方の発言に向き合って、できるだけリプライを返すようにしています。
吉田:SNSの運用とアンバサダーマーケティングの両方をご担当されて、これだけ細やかなコミュニケーションをされているのはすごいですよね。
その丁寧な気持ちがファンの熱量アップし、フォロワーを増やしているのではないでしょうか。
鈴木さん:こういう毎日の積み重ねは、どちらかといえば地味な作業です。ですが、もしもそれで、これまで知らなかった方にブラックサンダーを知っていただけたり、またはファンになっていただけたりというきっかけになっているとすれば、こんなに嬉しいことはありません。
吉田:今後もフォロワー数は伸ばしていく予定でしょうか。
鈴木さん:弊社のような、テレビCMを打たない会社では、認知アップにおいてもファンの増加ということにおいても、フォロワー数を増やすことをKPIに設定すればいいのかなと考えています。ただ、社内では「もう数はけっこう増えたから質の部分を考えて、人数はもういいじゃないか」という声も出たりして悩んでいます。
ブラックサンダーさん公式 2022年6月28日時点
吉田:もしも、インセンティブ目当てでファンでもないフォロワーが増えていれば、全体の質が落ちるという心配はあります。ですが、やり方次第で数も質も両方、担保できると思います。
鈴木さん:僕もそう思います。質も大事だけど、数も大事。どうやったら、より質が高まるかも考えながら、今後フォロワー数を増やしていきたいです。むしろ、どういう状態であれば質が高まっているかを、社内に数字で示せないことが課題なのかもしれませんね。
吉田:エンゲージメントの高さは、フォロワーの質や熱心さに現れていると考えてもいいと思います。
鈴木さん:現在2022年9月6日に開催する「超黒い広報会議」に参加いただく9名の実行委員と企画を詰めており、この実行委員のメンバーのように、とても熱心なフォロワーの方、ファンの方と繋がることができています。「次はどんなことをやったら喜ばれるでしょうか」「ブラックサンダーについて思っていることを教えてください」など、DMで相談をさせていただくような方も何名かいらっしゃいます。
吉田:告知については、プレミアムシリーズの特設サイトにUGCを利用することで、訪問ユーザーが130%アップしたとのことです。そういった数字もツイッターのフォロワーの熱量や実績を表現する数字として使えそうですね。
鈴木さん:そうですね。エンゲージメントを取ることが結果的にマーケティングにも役立つんだ、ということを僕自身は実感していますが、それを社内にもしっかり示せると、もっと柔軟に企画や予算が取れるようになるかなという期待があります。
たとえば、商品プレゼントのリツイートキャンペーンで一度に3万人くらいフォロワーが増加することもあり、ブランドに対する期待は高いのではないかと思います。そこからエンゲージメントを上げていくことでファンになっていただくことが可能である、と証明できるように対応を考えております。
新しいファンの心を動かす「黒い広報活動」から、見えてきたもの
吉田:ここで有楽製菓さんの担当をしている望田さんから、「黒い広報室」の効果を数字でまとめていただきましたので、ご紹介いただけますか。
望田さん:アンバサダープログラムがスタートしてから、ファンの活動がどう変化したかを可視化してみました。まず、広報員の発言数ですが、プログラム開始前との前年同時期の比較でオーガニック投稿が10倍以上になっていることがわかります。さらに「黒い広報室」になってからは、名称が「ブラックサンダーアンバサダー」の時の2倍程度に発言数が増えています。
投稿推移
望田さん:また、キャンペーンやプログラム名称変更後などに投稿数はそれ以前の50〜100倍程度まで跳ね上がる効果があります。これは、黒い広報員になることで、意識が変わったという効果もありますし、広報員にはキャンペーン参加を含めて、メルマガや公式ツイートなど、広報室長の鈴木さんの声がダイレクトに届くこと、リプライやコメントなどを通したコミュニケーションによりファンの熱量があがっていることで参加率が上がっているのではないかと推測されます。
発言データ推移
鈴木さん:ありがとうございます。やはり、アンバサダー活動は具体的に効果があり、ファンへの転換や宣伝にも役立っているんだと言えますね。こういう資料を社内でも示すことで、納得感が得られそうです。
コロナ禍で始まったプログラムだからこそ、
夢に見るオフライン開催
吉田:2年間SNSをご担当され、また1年間のアンバサダー活動を通してここまで大きくなってきたコミュニティですが、ファンの方々とこれから実現させていきたいことなどありますか。
鈴木さん:今年はいつもの「黒い広報会議」を拡大版にして、広報員が自らほしいグッズを弊社の社長にプレゼンするという「超黒い広報会議」の企画を進めています。
吉田:社長にプレゼンって社員でもあまりできないですよね…。
鈴木さん:はい、なので実行委員の方と密なコミュニケーションを取り、この日のゴールに向かって一緒に取り組んでいこうというビッグイベントになっています。
それから……オフ会を開催して一人一人の方にお会いしたいな、というのがすごく強いですね。対面でみなさんが集まって、ブラックサンダー好き同士で本当に語り合う会がやりたいなーと思っています。それが今は夢です。
吉田:コロナ禍のスタートなので、これまでは全てオンラインだったんですね。
鈴木さん:そうなんです。オンラインだから全国と気軽に繋がれるという良さはありますが、SNSの文面からは、相手の表情や気持ちというのはパっとわかりません。 今、そういったSNSの良さと限界をそれぞれ感じているとこです。今年は無理だとしても、来年には絶対にオフラインで開催したいと思っています。野外でフェスっぽくできたら嬉しいですね。
吉田:ぜひ実現させたいですね。本日はありがとうございました。
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