WORKS導入事例
阪神梅田本店「いちごアンバサダープログラム」が スカウト型で取り組むファンとの共創
阪神梅田本店 新規顧客を連れてくる大阪の中心地で多くの買い物客を支える阪神梅田本店では、2019年度より「いちごアンバサダー」による「いちごバレンタイン」の催事が行われており、熱量を年々高めています。今回は、立ち上げ担当の黒田様、溝口様、現担当者の安田様と、弊社の担当営業である南さんを交えて導入きっかけや来店効果測定に関しインタビューを実施いたしました。
もくじ
デジタル化を推進させる上でのアンバサダー施策
吉田:本日は立ち上げ時のご担当の黒田さん溝口さん、現担当の安田さんにお越しいただいて立ち上げから現在までのお話をお伺いしていこうと思います。
本日はどうぞよろしくお願い致します。まずは自己紹介をお願いできますでしょうか。
黒田さん:「いちごアンバサダー」の立ち上げに販売促進部として関わり、現在はフード販売統括部 OMO販売企画部所属の黒田と申します。OMO販売企画部ということで、お客様とオンラインでもオフラインでもつながる企画・運用をミッションとする部署です。阪神百貨店では、社員がファン(お客様)とOMOでつながる役割をする「ナビゲーター」という取り組みがあり、こちらを運用促進する立場でもございます。
阪神百貨店は、直接の接客・アナログの宣伝がメインとなっており、デジタル的な対応に課題がございました。そこで、積極的にオンラインでのクチコミを広げたいということがあり、アジャイルメディアさんに私から問い合わせをしたのが、現在の「いちごアンバサダー」の発端になります。
溝口さん:毎週行われる阪神百貨店の催事を企画・運営をしております、溝口です。昨年までは、安田と一緒に販売促進部の一員として「いちごアンバサダー」の企画・運営を行っていました。その流れを踏まえて、バレンタインだけでなく、阪神百貨店の催事コンテンツ全体を企画・運営し、デジタル化も進めていこうというのが、現在のミッションです。
安田さん:私は、販売促進部 宣伝・広報部に在籍しています、安田です。「いちごアンバサダー」の初年度は阪神梅田本店公式SNSの担当をしており、今年は溝口から引き継いで、バレンタイン商戦及び「いちごアンバサダー」のメイン担当となりました。その他にも、様々なプロモーションや企画・宣伝の仕事をしています。
南さん:アジャイルメディア・ネットワークの南です。大阪オフィスのリーダーをやっております。阪神百貨店さんや関西方面のクライアントをメインにご支援させていただいております。
吉田:黒田さんからお問い合わせをいただいたということで、どのようなきっかけでアンバサダープログラムに興味を持たれたのかお伺いできますでしょうか。
黒田さん:阪神百貨店は、紙媒体や看板での宣伝、パブリシティの分野はとても強かったのですが、ウェブ媒体での拡散に関しては課題がありました。当時、ウェブやSNSで検索しても阪神百貨店のことを書いているクチコミを見つけることは難しかったです。
そういった阪神百貨店で売っている商品やイベントについてネットやSNSに情報がない状態を解消しようと思い、「どうやったらお客様がクチコミして話題にしてくれるんだろう」ということを考えパートナーを探していたところ、アジャイルメディアさんが私達の課題の解決策を持っているように思えましたので、さっそくお問い合わせフォームから申し込んだんです。御社の出口さんがこちらにいらしてくださって、そこから話が進んでいきました。
立ち上げ時の話をしてくださる黒田さん
アンバサダーは公募ではなくスカウト制にし、熱量を高く
吉田:デジタル化を推進される中でスタートされたということで、社内でも違う考えがあったかと思います。アンバサダープログラムをやれば、効果があるという確信はおもちでしたか?
黒田さん:当時はまだまだ紙媒体至上主義ですので、紙を刷れば刷るほどお客様が必ず来る、と信じる社員が多かったですね。しかし私たちWeb担当メンバーの中ではWebサイトのアクセスが増えればお客様が増え、逆にネットやSNS上になにもないと来店も増えないということは知見として認識していました。そのため、クチコミがでないなら、自然発生させる仕組みをつくらないと、と考えていました。
当初は、「阪神百貨店アンバサダー」ということで、クチコミをしていただける有志の方を公募しました。ご応募いただいた方は、従来の阪神が好きな30〜40代の女性がメインでした。大変有難いプロジェクトチームではあったのですが、「百貨店」というキーワードだけではみなさんに集まっていただいても共通点があまりなく、アンバサダー同士での交流が難しかったです。またクチコミを通して、今接点を持つことができていないお客様層にアプローチがしたいということもあり、あと一歩といった印象でした。
吉田:最初から「いちごアンバサダー」という形ができていたわけではなく、トライがあったということですね。
黒田さん:そこで、これから訴求したいお客様層への方向修正がそのあと必要になりました。ちょうど前年に「いちごバレンタイン」というテーマでバレンタイン催事を実施したこともあり、「いちご」をキーワードにアンバサダーになってほしい方をSNS上で探して、こちらからスカウトをするという方式にトライしました。
吉田:どのように探されたのでしょうか。
溝口さん:私たちが求めているアンバサダーはどういう人か?を再考しました。
考えたのは、阪神百貨店に来てほしい層に訴求する力を持っていて、フォロワー数に関係なくSNSで活発に“いちご”や“スイーツ”に関して発信されている熱量の高い方です。
そういった希望をアジャイルメディアさんにお伝えし、SNS上から探してもらった候補の方々のプロフィールや好きなもの、投稿の内容などを確認し議論し、最終的にはとにかく「いちごのスイーツがすごく好き」な人に絞り込んで、75人を「いちごアンバサダー」に任命しました。
南さん:阪神のみなさんは、アンバサダー候補の方々を丁寧に選ばれるので、こちらも提案する際はより希望に近い方を見つけようと必死になります。
吉田:2020年のバレンタイン催事に向け、2019年11月15日にキックオフミーティングを開催されます。その盛り上がりを少し耳にしているのですが、初めてのミーティングの様子はいかがでしたか?
溝口さん:まず、初対面の人同士なのに、ものすごく意気投合していたことに驚きました。いちごのスイーツの写真を撮ったり、お互いに情報交換したりして勝手に盛り上がっている。「お知り合いだったんですか?」と聞くと、「初対面です」と(笑)そのくらい盛り上がりがすごかったです。
最初のファンミーティングの話をしてくださる溝口さん
吉田:最初からその熱量でお話しをされるのはすごいな、と思うのですが他のプログラムもそうなんでしょうか。
南さん:「いちごアンバサダー」の方々は、私が知っている中でも特に熱量が高い方です。公募のアンバサダープログラムの場合は好きの度合いやブランドに対する熱量はグラデーションになりますが、「いちごアンバサダー」の場合は任命の際に選考をしていることもあり、みんな熱量が高くてアクティブさが群を抜いている印象です。
溝口さん:初年度は催事が直近に迫っていたためあまりたくさんのことはできなかったのですが、SNSのクチコミだけでなく、仕上がったパンフレットをあちこちに配ってくださる方、イベントの様子をビデオ撮影してPRムービーを作成・拡散してくださる方など、多様な自主活動の様子がみられて、私たちも本当にそのアクティブな貢献のされ方に驚きました。それが翌年、さらにイベントの中に入って共創いただく活動へと成長していきます。
安田さん:2021年の2回目はイベント会場の装飾や出店いただくお店の商品についてアイディアを出してもらったり、アンバサダーの方のアイディアから新たな企画が生まれるなど大きな成果がありました。現在は、水面下で来年のイベントへ向け意見交換を始めています
アンバサダーは顧客との関係、長期継続する覚悟が必要
吉田:非常に盛り上がった「いちごアンバサダー」ですが、運営の継続はスムーズに社内で決定がされたのでしょうか?
黒田さん:「いちごアンバサダー」の方々には、金銭的な報酬を渡して先ほどのような活動をお願いしているわけではありません。
コミュニティを阪神がどうリードしていくのか、メンバーは同じでやってくのか、入れ替えていくのかといったことは考えましたが、継続は前提です。そして、いまの担当の安田さんが引き継いでくことになりました。
お客様との大事なコミュニティですから、どうしてもという理由がない限り、必ず続けるという覚悟をもって始めています。
吉田: 「いちごアンバサダー」の担当を引き継いで、安田さんはいかがですか?
安田さん:アンバサダーの方々と共創していくにあたり、一番すごいなと思ったのは、「私たちに阪神さんは何をしてくれるの?」ではなく、「アンバサダーとして私に何ができるだろう」「阪神さんのためにできることはなんだろう」ということをずっと言ってくれるということです。そんなことを常にいってくれるお客様を持っていることの素晴らしさを、私も改めて実感しています。
吉田: 今年のアンバサダーサミットのために安田さんがVTR出演してくださったのですが、その際にお伺いして驚いたことがありました。今年、「いちごアンバサダー」の方々が考えられていたイベントが中止になって安田さんとアンバサダーの方が偶然店舗で会った時に一緒に涙されたと…。
安田さん:そうですね笑 「新型コロナウィルスの影響で、一緒に準備していたイベントが中止になりました…」ということは事前にお電話でお伝えしていたのですが、後日アンバサダーの方がたまたま来店されて直接お会いしたらまた悲しくなってみんなで泣いてしまう、みたいなことがありました。「絶対来年はやろうね」と約束してお見送りしました。
去年と今年の「いちごアンバサダー」に関して話してくださる安田さん
吉田: そこまで共感しあえるファンの方々がいるのは、本当にすごいことです。
従来型の宣伝とちがうファンの凄さ
吉田: 「いちごアンバサダー」は、スカウト型で少人数の活動で成功しています。その評価はどのように社内で認識されていますか?
溝口さん:これまでデパートの価値というのは「種類も在庫も豊富にある」「会社帰りによれる便利な場所」などでした。ですが、コロナ以降は人も街に出なくなり、インターネットで買えるものも多くなったことで、「一人ひとりのお客様としっかりと繋がりましょう、離れられないようにしていきましょう」、と言う方向に、社内の考え方も一気にシフトしています。その中では、アンバサダーというあり方は、以前にくらべて評価されている、始めたときよりは地位があがってきていることは確かです。
黒田さん:アンバサダーと関わっていない社員は、インフルエンサーと区別ができず、金銭報酬などの待遇をしてやってもらっていると思い込んでいる人が多いんです。
また社内ではファンを作るのは大事だけど、少量では意味がないという意見も多いです。しかしアンバサダーのクチコミの波及を見れば、熱量が高く、少数のファンのメッセージは、多くのターゲット層に刺さることが明らかです。ファン数の不足問題はUGC広告で補完すれば解決できると考えています。
吉田: ソーシャルメディアからの来店数への影響などの数字は活用されていますか?
黒田さん:もちろん「SNSを見て買いにました」という直接の声を伺うこともありますし、アンケートなどを使い、来店要因を確認しています。SNS上でのクチコミは確実に増えているので効果は実感していますが、社内で売上への貢献を評価できる数値化づくりについてはまだまだこれから、というところではあります。
吉田: 今年のイベントでは弊社もお手伝いをさせていただき、来店の効果測定にチャレンジしてみました。それによって、アンバサダーの一人当たりの貢献金額や、来場へのインパクトが測れたかと思うのですが、社内での反応はいかがでしたでしょうか。
黒田さん:現状の施策やアンバサダーの皆さんの売り上げへの貢献も思っていたより高かったですし、社内への説明はしやすかったです。ただ説明するにはもう少しデータが必要かなというのが正直なところです。
吉田: 私も貢献金額を見たときは驚きましたが、初めての効果測定なので、これから継続して効果測定をしたらより深く貢献の度合いが分かるのでは、とは思います。
数字の面での説明も必要ではありますが、SNSは使わないとなかなか実感できないものです。社員の方に理解していただくために出来ることはあるでしょうか?
黒田さん:現アンバサダーさんは実際にお店に来ていただけるので、社員はアンバサダーさんと積極的にお話ししてくれれば、と思いますね。楽しいですし、お店のことをいろいろ言ってくれるし、それはお会いしたら実感として嬉しくなると思いますね。SNS上ではよくわからなくても、リアル体験ならすぐ理解できると思います。
吉田: リアルイベントやアンバサダープログラムに社員さんも巻き込んでいくというのは、いいアイデアですね。
お客様の声を反映させる、新しい百貨店のカタチに向かって
吉田: 「いちごアンバサダー」の今後や、共創のあり方についてお考えになっていることを教えてください。
安田さん:現担当としては、まず来年のイベントです。今はコロナの影響もあり、普段はオンラインでアンバサダーさんとやりとりをしているのですが、お店に足を運んでいただくこともあり、私たちにとっては「共創」することが普通の感覚になってきていますね。そもそも、「いちごの祭典だから、いちご好きの人に聞くのが間違いない」と(笑)
南さん:「いちごバレンタイン」以外でもアンバサダーさんが活躍されてますからね。
「いちごアンバサダー」担当 アジャイルメディアの南さん
溝口さん:昨年「アイスクリームクリスマス」という催事を企画し、そこで、「いちごアンバサダー」の一人の方に、お店のセレクトをやっていただきました。アンバサダーさんが選ぶお店はプロのバイヤーとは全く違うので、最初は大丈夫かな?という感じの社内の反応だったのですが、こちらの予想に反して、あっという間に完売し、社内でも驚きの声があがりました。
そこで感じたのは、アンバサダーの熱量をもってセレクトされた商品は、やはり強く共感されたり、熱意がしっかりとほかのお客様に伝わるということです。私の勝手な意見ですが、こういう試みをもっと、百貨店のあちこちに広げていったら、“むちゃくちゃ共感されるお店”になっていくと思います。
黒田さん:アンバサダーは仕事じゃなくて「好き」でやってくださいます。全然パワーが違うんです。仕事と好きでは、好きでやっている人のパワーが勝つ。だから、そういうみなさんに、いかに気持ちよく百貨店と共創してもらうかを応援するのがこれからの私の仕事と思っています。
吉田: 百貨店がお客様の意見を聞くだけにとどまらず、お客様が好きなもの、選んだものを取り扱ってくれるなんて、なんて新しい百貨店のカタチなんだろうと思いました。「いちごアンバサダー」を発端にした、ファンとの共創の発展にこれからも注目しています。本日はありがとうございました。
阪神百貨店さんのこれからの共創していくお店作りからも目が離せません。
黒田さん、溝口さん、安田さん有難うございました!!
こちらのインタビューは、新型コロナウイルスの感染対策をした状況下で行っております。
他の事例も見る
-
ブランドパーパスに共感を 〜Makuakeの応援型アンバサダーマーケティング〜
ポジティブな評判を形成する -
新規顧客の獲得機会は既存顧客から生まれる 〜パルシステムのアンバサダーマーケティング〜
新規顧客を連れてくる -
関係人口とアンバサダーマーケティング
リピーターと盛り上げる、小笠原村アンバサダーとは ポジティブな評判を形成する
-
カルビー株式会社
共創商品は新規の購入者を増やす、 カルビーの「堅あげポテト 応援部」
新規顧客を連れてくる -
ブリュードッグ・カンパニー・ジャパン株式会社
ビールの世界をファンと一緒に変えていく BREWDOGのアンバサダーマーケティング
ポジティブな評判を形成する -
株式会社にんべん
「にんべん」のだしアンバサダー
どう売るかではなく、どう繋がるか。 ポジティブな評判を形成する
-
アイロボットジャパン合同会社
ファンの声には企業が伝えきれない価値がある
6年目のアイロボット ファンプログラム 新しいアイデアをくれる
-
FCAジャパン株式会社
ファンと繋がり、想起率を維持。アルファ ロメオ のインタラクティブなコミュニケーション
売上を支える、伸ばす -
阪神梅田本店
阪神梅田本店「いちごアンバサダープログラム」が スカウト型で取り組むファンとの共創
新規顧客を連れてくる