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Googleの「ステークホルダーに対する配慮の欠如」に対する批判について

2007年03月08日 お知らせ

今日(2007/03/07)のCNET Japanのトップ記事に、「『組織的に違反』:MS、グーグルを著作権問題で非難」というものが上がっています。(”Google ‘systematically violates copyright’ law.”という一文からとったと思えるタイトル:「組織的に違反」…という訳が、原文のニュアンスを相応に伝えているかどうか、といった細かな点はさておいて)。この記事の主体であるMicrosoftの動きはひとまず脇に置くとして、ここで焦点の当たっている問題は、私が前回のエントリの中で触れたのと同じ事柄に思えます。それは一言で言うと、「ある情報エコシステム内での、ステークホルダー間での『より公平な価値の分配』」ということです。

Googleとしては、300年くらい(!)かけて世界中の情報をインデックス化=検索可能にしていきたい思惑のようです。もしそれが実現できれば、たしかにGoogleユーザーの利便性も高まるでしょうし、Googleにとっても世界中の情報が自社の広告在庫、もしくは他の(アフィリエートリンクのような形での)収入源となるでしょう。が、Googleの広告在庫となるコンテンツの作り手にとっては、そうなることによって得られるプラスと逆に失われるマイナスの影響とがいまだに明確ではありません。たとえば、米国出版者協会(AAP)側では「オンラインでの出版物(の中身の)閲覧が増えれば、それだけ書籍の売り上げが減少する懸念がある」と考えている。それに対し、Googleの言い分は「検索によって書籍の中身が人目に触れる機会が増えれば、それだけ本を買ってくれる人の数も増えるはず」というものです。

現状では、両者の主張はほぼ平行線をたどってきているように思えます。その原因は各々の主張をサポートするデータが提出されていないから、と考えられます。MP3ファイルの勝手な流通によって音楽業界が被ったダメージを見聞きしている著者&出版社にとっては、Google側の主張を受け入れるにはやはりある種の信念の跳躍(”leap of faith”)が必要なはずです。そのため、Google側からプラスがマイナスを上回ることをはっきりと示す何らかの説得力のあるエビデンスが提出されない限り、著者&出版社側でこの跳躍が起こる可能性は低い、といえるのではないでしょうか。また、そうしたエビデンスを提出することもなく、有力図書館との話し合いだけで(=著者&出版社側の知らないうちに)書籍のデジタル化&オンライン公開を進めようとするGoogleの姿勢が、利害の衝突する相手側からは「著作権に対してかなり尊大な態度」(cavalier attitude toward copyright / この場合のcavalierはどちらかというと「無頓着」ではないように思いますが)と受け取られてもしかたのないものに映るのではないでしょうか。

コンテンツの作り手や権利の保有者にとっての問題は、この「プラスがマイナスを上回る」ことがはっきり示されるだけで解決するでしょう(それが難しいからこそ、USATodayをはじめとするメディア各社が独自に新しい試みを始めている、と見ることもできます)。また実際に、そうした例も一部には出始めているようです(以前、Googleに焦点を当てたNHK特集でも、AdSenseからの売上だけで生計を立てている米国人の例が紹介されていましたし、かなり例外的な存在かとも思われますが、私の身近なところにもそういう方がいます。もちろん、いわゆる「スーパーアフィリエータ」的なやり方でなく、ブログのコンテンツつくりに比重を置いて活動されている方が、です)。

ただ、概して、AdSense等のマッチング広告やアフィリエート広告からの収入というのは、ごくごく少ないものである、との印象は否めません。メディア・パブに今月初めに投稿されたエントリ(「職業ブロガーで生活できる人,6500万人中100人だって」が物語るものは、まさにそうした少なさを示す傍証といえるのではないでしょうか(少なくとも、フルタイムの作家やジャーナリストは世界全体を合わせれば100人よりもっとずっとたくさんいるはずです)。

不特定多数無限大のネットユーザーと、やはり不特定多数の膨大な広告主とを、AdWords/AdSenseというかなり効率的な仕組みで結びつけたGoogleの功績については、いまさら屋上屋を重ねる必要もないでしょう。ただし、同社がそれに続く次の金脈を掘り当てる、大ヒットをかっ飛ばすためには、従来通りの技術的な能力の高さや合理的な考え方などに加え、関係する各ステークホルダーへの配慮がもっと必要になるのではないかと思います。

繰り返しになりますが、ブログを書く/コンテンツを作るという作業には、それなりにたくさんの知力や労力、そしてある種の才能が必要なはずですし、またGoogleその他の「検索広告の在庫」にするためだけにブログを続けている人というのもほとんどいないはずです。だとすれば、もっと違う収益源の選択肢があってもいい。前回のエントリで記した以下の一文:

「書き手/作り手のみなさんにできるだけ多くの分配を」という主旨で考えたAMN(あるいは米のFMPなども含めて)の仕組みは、ステークホルダー間での「より公平な価値の分配」につながっていくようなモデルではないかと考えます。

には、そういう現状に対するアンチテーゼの意味合いも込めたつもりです。無論それは、止揚(アウフヘーベン)に向けた建設的な異論であり、より多様な書き手の支援を通じて、より多様なコンテンツの選択肢を読者/オーディエンスのみなさんに提供できれば・・・というAMNの想いから発しています。

次回は、そんなみなさんーこのエントリをお読みいただいているあなたご自身の「アテンションはタダではない」という話を書きたいと思います。

坂和敏