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ファンの行動とビジネス貢献の関係分析モデル『アンバサダーアナリティクス』開発の舞台裏|ファンの価値を可視化し、ビジネス貢献の証明に挑む【前編】
2021年10月14日 CROSS TALK
今回は、ファンの行動とビジネス貢献の関係分析モデル『アンバサダーアナリティクス』を開発した社内メンバーと、当社取締役の上田が、開発に至る経緯や内容、また将来的な展望などについて語りました。
前編は、『アンバサダーアナリティクス』とはどういうものか、また開発に至った経緯や狙いなど、開発者のリアルな声をお伝えします。
■アジャイルメディア・ネットワーク株式会社(AMN)
AMNは『個の力を最大化し、“小さな経済”を成長させる』をミッションに事業を展開しています。製品/サービスのマーケティング活動をファンと共に推進する「アンバサダープログラム®」や、動画DX特許テクノロジー「PRISM(プリズム)」、D2C/SMBサクセスを支援する「デジタルパンダ」「ヘアスタディ」事業を展開しています。
URL:https://agilemedia.jp/
■インタビュー参加メンバー
■これこそがAMNのやるべきこと
―はじめに、『アンバサダーアナリティクス』とはどういうものでしょうか。
藤本:『アンバサダーアナリティクス』とは、ファンのことを「もっと知り」、ファンが生み出す「価値を可視化」するための分析モデルです。
「もっと知る」ことにより、ファンが商品・サービス・ブランドに対して“感じているコト”“求めているコト”を、より深く理解することが出来て、今まで以上にファンの気持ちに近い機会を提供できるようになります。その結果、ファンの気持ちがより高まり、SNS上でのクチコミ発信や製品の購入といった活動の活性化につながると考えています。
また「価値を可視化」するということについてですが、企業がファンコミュニケーションの施策に投資し続けるためには、ファン、またはそのコミュニケーション自体の、ビジネスにおける貢献価値を可視化することが求められます。それが示せないと、施策の継続が出来なかったり、追加で予算を投じて注力するべきか判断することが難しくなってしまったり、というのが私たちの顧客企業様の実情なのです。
一般的にファンの価値は人数規模やSNS上でのクチコミ数、波及数で計測されるのですが、アンバサダーアナリティクスでは、ファン本人や、ファンを通じた第三者の購買を可視化しビジネス貢献を証明することで、ファン施策を継続・拡張しやすい環境を作っていきたいと思っています。
■アンバサダーアナリティクス https://agilemedia.jp/ambassador-analytics/
―『アンバサダーアナリティクス』はどのようなメンバーで、どんなことがきっかけで作り上げていったのでしょうか。
藤本:もともと『アンバサダーアナリティクス』は新指標を作るためのプロジェクトではありませんでした。レポートを作る側のSS(ソーシャルメディアスペシャリスト)部と、価値をクライアント様に伝える側のAM(アンバサダーマーケティング)事業部で集まった時に、クライアント様へ提出する既存のレポート内容を見直し、もっとアンバサダーの貢献価値を証明するための改善はできないか、そういったところの議論をしていました。
松宮:その打ち合わせがひとまず終わって雑談をしていた時に、形は違えども同じくファンマーケティングをやっている会社を取り上げた記事の話題になりました。それを見て、私たちだって、ファンやアンバサダーのことをずっと考えている、ファンマーケティングの草分けとして、もっと何かできるはずだ!と、熱い議論になりまして。(笑)
いまクライアント様へ提出しているレポートでは、クチコミの件数とそのリーチが主な成果指標となっているけれど、私たちが接しているファンは、クチコミや購買といったこと以外でも、「好き」の表現をたくさんしている。そこを可視化して報告出来たら、本当のファンの価値をもっと伝えられるのでは、という話になり、改めてこの議題に関してキックオフミーティングを設置しました。
まず、ファンの「好き」という想いは「どんな行動に表れるのか」をみんなでアイデア出しすることにしました。「言いたい」という行動が強い方もいれば、「知りたい」に特化している方もいるはずで、発信はしないけど、好きなものに対してとても興味があり、深く「知りたい」という方たちの想いや欲求を把握したいと思いました。それを可視化できるのは何だろうと考えたときに、図形にすると分かりやすい見せ方になるなと考え、最終的に「好き」が真ん中にある「アンバサダーマインド」の5角形に繋がったのだと思います。
図:ファンによる表現や行動の欲求を集約した分析指標「アンバサダーマインド」
藤本:行動の要素を挙げていくにあたり、チームのあるメンバーはアイドルのファンに関する学術的な論文から「ファンというのはこういう分類ができます」という情報を出してくるなど、それぞれに色んなパターンを持ち寄りました。
専門的な文献にも目を通し、ファンがどう想うのか、またファンが考えていることを知るためにアンケートなどでどう訊いたらいいのか、というところも全て心理学的要素を加味して設計しています。設問の意図をとらえたうえで回答してくれるだろうか、こういう考え方が邪魔をして本音ではない答えを誘発してしまわないか、そういったところも含めて、メンバーみんなで突き詰めていきました。
SS側としては、主にプロジェクトの進行、ファンを対象とした調査・効果測定の設計、レポートのフォーマット作成を行いました。その後、仕様が固まったタイミングで四家さんにもメンバーに加わってもらい、理にかなった計測が出来ているか、レポートをどう作っていくか、アンケートデータをどう消化していくのかといったところを進めていきました。いま思うと、そのあたりからプロジェクトが加速していきましたね。
四家:藤本さんの構想をいかに形にするか、という想いでした。
藤本:また、アンバサダーアナリティクス完成後は、松宮さんと私で「アンバサダーアナリティクスを導入すると企業にとってどのように良いか」という内容の対外的な勉強会の講師を務めたりもしました。
松宮:AM事業部側では主にクライアントニーズの共有や、資料作成、何を価値として『アンバサダーアナリティクス』の導入を推進するか、という部分を決めていきました。また仕様決めなどに関しては、このプロジェクトの全員で意見を出し合って決定しました。
ファンの行動って、こういうのがあるよねって出しているとき、大変だったけどすごく楽しかったです。無から有を生み出す楽しさはもちろん、メンバーが“これこそAMNがやるべきことだ”と思って取り組みました。
■プロ集団が考え抜いた設計
―『アンバサダーアナリティクス』の設計には、どのような考えに基づいた仕組みが組み込まれているのでしょうか。
藤本:まずファンの行動を細かく洗い出しました。要素として、外交的なのか内向的なのかを考えた時に、例えば「知りたい」って自分の中身の話で、「言いたい」は外に発信するものですよね。また、一人で出来ることなのか、誰かと一緒じゃないと完結できないことなのかという要素で言えば「ファンと繋がりたい」は、他の人がいないとダメじゃないですか。でも「知りたい」や「買いたい」などはある程度一人で動作が完結するな、というように、一つひとつ見ていきました。
そして、それを評価するための各指標を設定するように進めていきました。例えばこの行動の評価は、サイトへのアクセスの有無を見ればいいかも、といったふうに項目を挙げていきました。
松宮:結局ここって、計測できないから難しくて他社もなかなかやれていない部分だと思うのですが、我々としては、測れるものは何があるだろうとみんなで考え尽くしました。
藤本:サイトのアクセス回数など、クライアント様側が持っている情報を想定し、それは実際どの行動に紐づいていくのか、そういうところも積み重ねていきました。
結局、完成までに1年半ぐらいかかってしまったのですが、ファンマーケティングに注力しているAMNが変なものを出したなって思われるのは絶対に避けないといけないので、そういう意味では納得感があり、次の活動指針となる分析モデルを、と意識して作りました。
松宮:例えば質問の内容一つとっても、考え抜いて磨き上げて、本当に訊きたいことを訊き出せるものになったと思っています。私自身も質問を一つ作るのに、こんなに練りこんで検討するのだと、すごく勉強になりました。
藤本:最終的にアウトプット(クライアント様へ提出するレポート)を出すにはインプットが必要で、そのインプットには二通りあります。
一つはデータとして計測出来ているもの、これは例えば行動データに分類されるクチコミ件数・フォロワー数などですが、これは事実としてデータで存在しています。連携できる場合は購買データなどもそうですね。
もう一つはアンケートデータなど、自己申告系のものです。先ほどの松宮さんのお話の補足になりますが、きちんと自分たちが欲しい情報をアンケートで取得するには、適切な質問でなくてはならないですし、誤解が生まれるようなものではいけないので、そこは単語や日本語としての表現、前後の設問の流れなど、細かいところを含めてみんなで色々話していきました。
上田:クライアントのニーズを確認するAM事業部メンバーと、分析のプロフェッショナルのSSメンバーがこのプロジェクトを構成していたからこそ、このモデルを組み上げられたといえますね。
■データから導き出される多様なファンの姿
―『アンバサダーアナリティクス』の狙いは、ファン施策の効果の可視化や、ファンの価値を証明することであり、それによって『アンバサダーマーケティング』の意義と効果を伝えたいということでしたが、こちらをもう少し詳しく聞かせてください。
松宮:『アンバサダープログラム』を行ってレポートを提出した後、クライアント様から「やって良かった」「NPS(ネットプロモータースコア:顧客ロイヤルティを測る指標。企業やブランドに対しての愛着や信頼を数値化したもの)の数値が上がった」といったところは評価いただいているのですが、これが最終的に会社の事業にどのように貢献したのかという社内への報告が難しい、という悩みを多く聞きます。それは確かに私たちも感じていて、ご報告できる数字がクチコミの件数とそのリーチくらいしかないというのは、すごくもどかしい思いでした。
そのようなことから、プログラムの価値をより伝えたいということはもちろん、一緒に取り組んでくださっている担当者の方が社内で報告される際に、もっと説明しやすい指標が示せるようにお手伝い出来れば、という思いが強くあったのですよね。
また同業他社を研究しても、この部分にチャレンジしている会社があまりなく、やはり当社がそこのポジションを取っていきたいなと思いましたし、この証明が出来れば、解約防止にもつながり、長くプログラムを続けていただくきっかけになるのではないかという期待もありました。
―この分析モデル構築の取り組みを知って、上田さんはどのように思われましたか。
上田:当然良い取り組みであり、AMNでなければできないことなのではないかなと感じていました。インフルエンサーのSNSマーケティングにおける効果指標は、ほとんどが「影響力」や「リーチ数」という部分しか見ないのですが、私たちが直接接しているファンの方たちは多様であり、色んな方がいて、「好きなブランド」に対しても様々な関わり方があるというのを実際に見てきたからこそ、今回のモデルを構築できたのではないかなと感じています。
また、影響力ではない指標でファンを分類する、そのファンの特性ごとに最適な施策を実行し、その検証を分析する、というサイクルはとても良いと思いました。
ファンの思考を分類・評価するというテーマは、当初はまとめるのが難しそうだなと考えていましたが、みんなが立派に形にしてくれたので今後の普及に期待を寄せています。