ENGAGEMENTdbレポート 「主要な調査結果」

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主要な調査結果
現在ソーシャルメディアには無数のチャネルが存在しているが、各チャネルが提供する価値はそれぞれに異なっている。したがって、すべてのソーシャルメディアを網羅し、同時にさまざまなマーケティングの取り組みを客観的に評価する方法を見つけ出すのはたいへんな仕事である。それに対し、WetpaintおよびAltimeter Groupがまとめたこの『ENGAGEMENTdbレポート』では、「エンゲージメント」という単一の基準を採用している。

われわれは、グローバルブランド上位100社が、さまざまなソーシャルメディア・チャネルをどの程度活用しているのか、そしてさらに重要なこととして、各企業の活用度と業績との間に相関関係があるかを理解する目的で、この調査を実施した。そして、ソーシャルメディアの活用度は数値化して計測できることがわかっただけでなく、積極的にソーシャルメディアを活用する企業ほど優れた業績をあげている、その理由も理解できた。以下にこの調査でわかった主要な点を記す。

企業のソーシャルメディア活用度は計測可能
今回の調査では、特定の種類のソーシャルメディアに用いるためにカスタマイズした評価基準を使って、さまざまなチャネルに関する各社の活用度を評価・計測した。また複数の部門や幹部がこれらのチャネルにどれほど深く関与したかについても調査を行った。このようにして、われわれは広さと深さの両面から各社のソーシャルメディア活用度を調べた。

われわれはまず各ブランドのチャネルごとの取り組みを数値化し、それを足し合わせて当該ブランドの活用度を示す総合点とした。そのため、注力するチャネル数が多いブランドほど、活用度を示す総合点は高くなった。付録Aには全調査対象ブランドの活用度を掲載してある。なお、活用度がもっとも高かったのは、11のチャネルを活用するStarbucksで総合点は127点だった。

調査対象企業各社の活用度と利用チャネル数をグラフに表すと、また別の発見がある。それが2本の回帰直線で表されるソーシャルメディア活用度の平均値である(図1参照)。

この図中にある2本の回帰直線は、積極的に活用しているチャネル数が6つ以下のブランドと、7つ以上のブランドにそれぞれ対応している1。回帰直線より上に表示されているブランドは、利用チャネル数が同じ他のブランドよりも平均して活用度が高い。そして、回帰直線より下に表示されているブランドは、自社が積極的に関わっているすべてのチャネルで、活用度が平均して低い。また次のような傾向も明らかになった。


図1:グローバルブランド上位100社のエンゲージメント度
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縦軸:ソーシャルメディア活用度 横軸:利用チャネル数

・利用チャネル数が増えるほど、全体的な活用度は上昇
上記のような傾向を示すために回帰直線を2本使用したが、それには理由がある。7つ以上のチャネルを利用しているブランドは、活用チャネル数がそれよりも少ないブランドと比較して、すべてのチャネルで活用度が高いことを示すためだ。つまり、活用するチャネル数が増えれば増えるほど、その活用度は急激に上昇していくといえる。これは、新たなチャネルを活用し始めるにあたり、別のチャネルでの経験から学んだことを活かせるという点が原因として挙げられる。このような効果はまた、各ブランドのソーシャルメディアに対する取組み方を反映している。すなわち、複数のチャネルにリソースを投じるブランドは、それぞれのチャネルの活用度も高くなっている。

・業種によって異なるソーシャルメディアの活用度
ソーシャルメディアの活用度が業種によって異なるのは意外なことではない(次項 図2参照)。ある業種に属する各企業は、他の業種の企業と比べて、活用するチャネル数も多く、各チャネルの活用度も高い。たとえば、メディア関連企業やテクノロジー関連企業は、より多くのチャネルを活用しており、活用のしかたもより積極的である。それに対して、アパレル、消費財、食品・飲料、金融系の各社は全体的に活用度が低い。これらの業種の各企業がソーシャルメディアでの実験を始めたばかりだとすれば、これは当然の結果といえる。

図2:業種によって異なるソーシャルメディアの活用度
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しかし同一業種でも、各社の活用度には大きな開きがみられる。たとえば、自動車業界の場合、Toyotaのようなブランドは(特にPrius関連では)多くのチャネルを活用し、積極的にコミュニケーションを行っている。対照的に、Mercedes-BenzやPorscheといった高級車ブランドは、それぞれ2つのチャネルしか活用していない。つまり、同一業界においてさえ、ターゲット顧客層の違いによって、ソーシャルメディアの取り組みに関する適切なレベルが異なる可能性があるといえる。これに関して、付録Bにいくつかの業界についての詳細を示した。

・4タイプに分かれる企業のソーシャルメディア活用状況
利用チャネル数と各チャネルの活用度に応じて、ブランドは次の4つのタイプのいずれかに分類される(次項 図3参照)。

達人型:7つ以上のチャネルを活用し、全体の活用度が平均値を超えているブランド。StarbucksやDellのようなブランドは、複数のソーシャルメディア・チャネルで、高いレベルのエンゲージメントを維持することができる。こうした「達人型」は、強力な戦略を持ち、ソーシャルメディア専任チームを抱えているだけでなく、それを市場参入戦略の中核に据えている。こうした企業では、ソーシャルメディアの積極的な活用なしに事業展開することは考えられない。

移り気型:7つ以上のチャネルを活用しているが、活用度が平均値を下回っているブランド。American ExpressやHyundaiのような「移り気型」は、多岐にわたるチャネルで取り組みを行っているが、手を広げすぎる傾向があり、いくつかのチャネルにリソースを投入する一方で、その他のチャネルをおざなりにしてしまう。これらのブランドは「達人型」になることを狙っており、そこに到達することもあるかもしれない。ただし、積極的なエンゲージメントに伴う複数のチャネルを通じた双方向コミュニケーションについて、社内から賛同を得ることには苦労している。

選り好み型:活用チャネル数が6つ以下で、活用度が平均値を上回っているブランド。H&MやPhillipsのような「選り好み型」は、少数のチャネルにおいて強い存在感を持っており、ここぞという時機を捉えて顧客と深く関わることに注力している。こうしたブランドでは、ソーシャルメディアでの取り組みに多くの人員が割り当てられない傾向があり、そのために取り組みの対象を一部に集中させる必要がある。こうした取り組みは、熱烈なエバンジェリストがわずかな予算で始めた「第一歩」といえる。

引っ込み思案型:活用チャネル数が6つ以下で、活用度が平均値を下回っているブランド。McDonaldsやBPのようなブランドは、ソーシャルメディアの取り組みを始めるのが遅かったか、あるいは取り組みを始めたばかりで、まだおそるおそる様子を見ている段階だ。またリスクに対しても慎重で、ソーシャルメディアの利点についても不安を感じているため、すでに利用しているチャネルでも活用度は低い。

図3:4タイプに分かれる企業のソーシャルメディア活用状況
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1) 達人型 2) 移り気型 3) 選り好み型 4) 引っ込み思案型

・ソーシャルメディアの活用度と企業業績との間に相関関係
「なぜソーシャルメディアの取り組みを行うのか」。これは企業にとってもっとも重大な問題である。そして、この質問に対する優れた答えをわれわれは見つけた。その答えとは「利益につながるから」というものだ。この2つの直接的なつながりを示すデータはまだないが、今回の調査で、ソーシャルメディアに積極的に関わっている企業では同業他社をしのぐ業績を上げていることがわかった(次項 図4を参照)。しかも、現在の経済状況を考えると、こうした相関関係はさまざまな業界の置かれた現状だけを表しているわけではないーーどの業界にも先述の4つのタイプにそれぞれ分類される企業が存在する(付録Cを参照)。

もっとはっきりいうと、ソーシャルメディアの活用度が高くチャネル数も多い企業は、売上と利益の両方で同業他社を大きく上回っている。実際こうした「達人型」は、現在の不況にも関わらず売上と利益を大幅に伸ばしている。これは単なる偶然だろうか。おそらくそうかもしれない。だが、われわれが目にしているのは世界で最も高い価値を持つブランド間にみられる重要な統計データである。

今回の調査では、ソーシャルメディアのリーチ(情報伝播力)だけでも企業の業績に好ましい影響を及ぼす可能性があることもわかった。たとえば「移り気型」は、「選り好み型」や「引っ込み思案型」もはるかに多くの売上を上げている。「なぜこのようになるのか」という質問に対するわれわれの仮説は「顧客接点」を中心にしたものーーより多くの顧客接点から波及効果(バイラル・マーケティングを含む)が生まれ、ブランドの認知向上と販売量の拡大につながる可能性がある、というものだ。

一方で、「選り好み型」のほうが「移り気型」より粗利も純利益も多いという点は興味深い。これは、チャネル数を絞り、選択したチャネルを積極的を活用するというやり方が、効果的なソーシャルメディア戦略として期待できることを示している。チャネル数の多さよりも活用度の高さに焦点をあてることで、より正確に顧客を理解し、より速やかに顧客ニーズに応え、結果として顧客満足を向上する機会を得ることが可能になる。そしてこれが価格競争力を生み、ビジネスを成功へと導くことにつながる。この見方は、先に述べた各業界別に特有の調査結果ーー「ソーシャルメディアでのプレゼンスと活用度の最適値はさまざまな要因に左右される」にも関連している。重要なのは、すべてに手をだすことではなく、正しいやり方をすることだと言える。

こうした調査結果は、必ずしもソーシャルメディアの活用度と企業業績の間に因果関係があることを示唆するものではないが、それでも多大な示唆を含んでいる。ソーシャルメディアの活用に経済的成功が組み合わさることで、健全なビジネス上の循環が続くようになる。具体的には、企業がソーシャルメディアにおける深い交流から生まれた顧客志向のビジネスマインドを持つことで、市場の顧客ニーズを捉え、それに応えることができるようになる。そしてそれが高い利益を生む。さらに、こうした経済的成功を収めることによって、企業はソーシャルメディアでの取り組みにより多くのリソースを投入することが可能になり、ひいてはそれがより優れた顧客知識の構築につながり、さらに利益が伸びることになるーーそのようにして正の循環が続いていくのだ。

図4:ソーシャルメディアの活用度と企業業績との間に相関関係
各棒グラフは直近12ヶ月の売上(左)、粗利(中)、純利益(右)の伸び率を示す。
各グラフの項目は左側から順に「引っ込み思案型」「選り好み型」「移り気型」「達人型」

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